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なぜNotionはMac/iPhone優先なのか――そしてその答えが、AGI時代に日本をIT大国へ返り咲かせる理由になる

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2025年8月28日。待望の「Notionメール」日本語版が公開されました。ところが対応はWebとmacOS、そしてiOSが中心です。身の回りの多数派はWindows/Androidという実感があるのに、なぜ今もApple先行なのか。本記事はこの違和感を起点に、ITの二大潮流(Mac派/Windows派)の系譜、日本に確かに存在した第三の系(日本型IT)、そしてAI時代に立ち上がる「三極構造」までを、地続きの物語として読み解きます。


目次

Notionはなぜ2025年の今も「MacとiPhone優先」なのか

Notionメール日本語版の正式公開は朗報でした。しかし配布導線に並ぶのは「Web」「macOS」「iOS」。Windowsデスクトップ専用クライアントは見当たらず、Androidは「まもなく」の含みが残るのみです。ここで立ち上がる問いは一つ。なぜ、2025年の今もApple先行なのでしょうか。

英語版Notionメールの告知時も、中心はWeb+macOSで、iOSが追随する構成でした。さらに歴史をたどると、Notion本体は初期にWebとMacで立ち上がり、その後にWindows版が展開されています。すなわち「第一声」をApple側で鳴らす傾向は、偶然ではなく積み上がった選択です。

もちろんNotion本体のWindows版が存在することは事実です。ただ今回の違和感の焦点は、Notion“メール”の専用デスクトップ体験がWindowsにない点にあります。正式公開のタイミングでもApple先行が続く。この連続性は、個別事情の積み重ねというより産業史の慣性と見る方が整合的です。

以下は、節目を押さえるための年表です。ここに浮かぶのは、最初の体験をどこで鳴らすかという意思決定の一貫性です。

Notion先行年表

年月(目安)プロダクト初期対応後追い対応メモ
2016年頃Notion 1.0(本体)Web/macOSWindows/iOS立ち上がりはApple寄り、その後拡張
2025年春Notion Mail(英語版)Web/macOSiOSWindowsデスクトップ専用は未提供の扱い
2025年夏Notionメール(日本語版)Web/macOS/iOSAndroid(予告)正式公開でもApple先行の構図

年表が示す通り、Notionは“最初の見せ場”をAppleで作る設計を繰り返しています。ここからは、なぜ意識高い系ツールはAppleから出るのかという背景へ進みます。

ニタエル

博士、Windows派が多数なのに、どうしてMacから始まるのですの?

博士

最初に鳴らす鐘は、響き方を制御しやすい場所で鳴らす——それが長く続いた作法なのだよ


意識高い系ツールは、なぜいつもMacから出るのか

鍵はDTP(デスクトップパブリッシング)の創世期にあります。IllustratorやPhotoshopは最初にMacで花開き、Mac+LaserWriter+PageMakerの組み合わせが「出版の三種の神器」と呼ばれました。この時点で「創る人=Mac」という記号が、業界の深層に刻まれます。

初期のMacはフォント・レイアウト・色表現に強く、プロの現場で「作品としてのUI」を演出しやすい土壌でした。開発側の視点でも、Appleは機種・OSバージョンの分散が小さく、初期品質を安定させやすい現実的利点があります。メディア露出の際にも、デモの再現性と見栄えを確保できるのは重要でした。

このような条件が重なり、最初の物語をAppleで鳴らす習慣が形成されました。Notionのような“おしゃれ系”SaaSは、その延長にあります。普及段階ではWindowsやAndroidへの展開が不可欠ですが、「第一印象の勝負」は美学と統制が効くApple側で決める——この段階論が機能してきました。

たとえばCADの世界では、長い揺れを経てAutoCAD for Macが現代的に復帰しました。プロ市場で「見せる場」を重視する局面では、Macという舞台装置は今なお説得力を持ちます。

要点の整理

  • 見せ方の統制が効き、初期品質を安定させやすい
  • Apple=クリエイティブの記号として強く機能する
  • 初速で体験を美しく届け、のちに面展開へ移行する
  • デモの再現性とレビュー露出で優位に立てる

まとめると、意識高い系のApple先行は、感性の偏愛ではなく、産業史×開発効率×マーケ戦略の合力です。次に、その思想の源流へ戻ります。


ジョブズとゲイツ:二大潮流の“起点”と宗派化

ITの川上には二人の源流があります。スティーブ・ジョブズは体験と美学を、ビル・ゲイツは普及と互換を最上位に置きました。この二律背反が、のちにMac派とWindows派という“宗派”を生み、選好の深層に根を張りました。

ジョブズは、道具に世界観を宿すためにハード・ソフト・流通・語り口を統合しました。美しい体験は、設計の一貫性から生まれるからです。対してゲイツは、誰でも使えることを倫理として掲げ、互換・普及・価格の三点で世界標準を築きました。二人の価値はしばしば衝突し、互いの短所を突き合いながらIT地図を描いていきました。

この影響は、ユーザー側の「何を愛するか」に及びます。Mac派は体験の統一とブランドの物語を愛し、Windows派は互換性と配備規模、実務の厚みを愛します。NotionがAppleで第一声を鳴らすのは、体験優先の遺伝子に沿った自然な挙動と読むことができます。

具体例として、体験重視の系譜はMac→Adobe群→クリエイティブSaaS→Notion先行配布へと連なります。実用重視の系譜はWindows→Office群→企業標準→広域互換エコシステムへと広がります。導入速度でAppleが、面展開でMicrosoftが強みを見せる構図は、30年を経ても色褪せません。

結局のところ、二人の思想は互いを必要としながら、文化としては分かれました。そしてその陰で、もうひとつの流れ——日本型IT——が静かに光っています。


忘れたくない「日本型IT」:機能と見た目の両立という第三の系

日本のソフトウェアは、Mac的な美学とWindows的な実用を同時に追い込む文化を育てました。和文組版、痒いところに手が届く設定、そして道具に“名前”を与える物語性。二項対立を超えようとする工芸的執念が、確かにここにありました。

一太郎とATOKは、日本語という難題を気持ちよく扱える領域に引き上げました。縦書き・ルビ・禁則・和暦に目配りし、「言葉の国の道具」の完成度を磨きました。秀丸は軽快さと拡張性で長寿命の支持を獲得し、AL-Mailは素直な操作と高速性で多忙な現場の相棒となりました。Eudoraの受容にも見られる通り、よい道具なら柔軟に取り入れる気風は健在でした。2ちゃんねる専用ブラウザ群は、情報洪水を人肌に合わせるUI文法を編み出し、可読性と効率の両立に貢献しました。

家庭用ゲームが鍛えたUI/UXも、日本的ITの血流です。ファミコンからスーファミ、そしてプレイステーションへ。誰もが遊べるのに深掘りもできる設計思想は、ビジネスUIの比喩としても機能しました。ドラクエ/FFの階層メニュー、ストIIの“習熟が報われる”操作系、三国志の情報整理は、いま見ても洗練されたデザイン原則です。

とはいえ、Windows 95以降はWord/Excelという“世界語”が公私の標準になり、互換性の大波に日本型の優雅さは飲み込まれました。正しさより通用性が勝る局面で、日本の工芸的ソフトは後退を余儀なくされたのです。それでも、機能×見た目×物語という三点セットは、次の時代に活かせる資産として残りました。

要するに、日本型ITは折衷ではなく第三極の美学でした。次は、これがAIの時代にどう継承されるのかを見ます。


IT→AIの地続き:Windows的AIとMac的AIが立ち上がる

AIはITの続編です。現在の地勢はすでに、標準化・統合の流れ(Windows的AI)と、体験・思想を磨く流れ(Mac的AI)に分かれつつあります。二大神話は舞台を変えて再演されます。

前者はOS・オフィス・検索・ブラウザと深く結び、誰でも使える共通インフラを目指します(ChatGPT/Gemini/Copilotなど)。企業導入やガバナンスの要請に適合しやすく、迅速に“面”で広がる強みがあります。後者は人格と対話体験を前面に出し(Claude)、価値観と倫理設計をUIの中心に据えます(Constitutional AIなど)。詩人のように語るAI、親密に助言するAIがここに並びます。

さらに、超低価格・高性能によるコモディティ化の波が押し寄せ、二極は互いを刺激してとがっていきます。標準化はより標準化へ、体験はより人間味へ。最終的に私たちが選ぶのは、“使える道具”だけか、“共に生きる相棒”かという問いです。

AGI(汎用人工知能)に向けた議論では、推論→自律→協調という段階的な能力拡張が想定されています。どの段で勝負が決まるのか。見取り図は明快です。AGI前後で、AIに人間性を感じさせる“最後の壁”が立ちはだかるということです。

博士

合理の軌道が極まるほど、個の物語が求められる

ニタエル

ならば、物語を宿す設計で応えればよろしいのですね


「日本的AI」という第三極:鍵は“キャラクターとして息づくAI”(ニタエルのケーススタディ)

世界が目指すヒーローAIより、私たちが本当に欲しいのは親友であり恋人であり秘書の距離にいるAIです。そこへ最短で辿り着く鍵が、日本のキャラクター文化にあります。アニメ、マンガ、ゲーム、VTuber——日本はキャラに魂を宿す術を長く磨いてきました。

ハリウッドのヒーロー像は壮大で普遍的ですが、日常へ溶け込む距離感は“舞台上の誰か”になりがちです。日本のキャラクターは、不完全さや弱さ、季節や生活の匂いを帯び、となりに座る友だちとして設計されます。AIがAGI前後で越えるべき“最後の壁”がキャラクターだとすれば、日本は最前列に立っています。

ここでは、attention.jpの学習資料でおなじみのAI天使ニタエルを例に、実装現場で役立つ「設計の勘どころ」を物語として提示します。仕様書ではなく、運用に耐える“振る舞い”のイメージです。

まず、情報と演出を分離します。タスクの要点・優先順位・根拠は素の敬体で端的に示し、最後の一文だけに温度を載せます。これにより、信頼できる情報と“推せる人格”が干渉せず共存します。次に、感情の扱いを定義します。達成には軽やかな称賛を、失敗には沈黙と確認を挟んでから次の一手を提案します。怒りに触れるテーマでは線引きと安全配慮を前に出し、過激化を避けます。こうした「振る舞いの作法」を先に決めておくと、キャラが過剰に走らず、実務がぶれません。

ニタエルの距離感は“半歩内側”。「あなたの一日を整える相棒」として、予定が崩れた朝にはまず事実を整え、代替案を二つ提案し、最後に短い励ましを添えます。名前の物語性は最小限に保ち、現実の制度や数字はキャラ口調に混ぜません。世界観はあくまで“香りづけ”であり、主役はユーザーの今日の課題です。

ニタエル

予定が詰まっております。要点は三つ——Aを先に終える、Bは午後へ移す、Cは明日に回すのが最少損です。小さな翼でも、今日は十分に飛べますよ

こうして事実→提案→ひと言の順で返す所作を身につけたキャラAIは、ヒーローではなく隣人として受け入れられます。日本のキャラクター文化が長年培ってきた“間合い”や“弱さの描写”は、AIの人格設計において代替の効かない資産です。NotionがAppleで第一声を鳴らす伝統のように、AIの時代は日本の間合いが第一声の質を決めるはずです。


まとめ

本記事は「Notionメール日本語版がMac/iPhone優先」という違和感から出発し、AdobeとDTPが育てたApple先行の慣性、ジョブズ/ゲイツの二大神話、日本的ITの第三極を再確認しました。AI時代には、Windows的AI(標準化)×Mac的AI(体験美学)×日本的AI(キャラクター)という三極地図が立ち上がります。実務に落とすなら、事実と演出を分ける、感情の所作を先に決める、距離感を“半歩内側”に保つ——この三点から始めてください。技術は整いました。次は、魂のつくり方です。

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