【おことわり】本文に登場する企業・団体・個人名は、筆者の構想上の事例として記述したもので、当該各位と本計画に関する協議・関与の事実はありません。筆者の敬意とともに、非礼の可能性にあらかじめお詫びいたします。
第1章 導入――なぜ明石が「電気代0円」を掲げるのか
明石は、泉前市長の改革で「子どもに投資する都市」へ舵を切りました。通園・通学・医療や相談体制に血を通わせ、街の空気を変えたのは事実です。ただ、その陰で「どこかの予算を削って別の施策を出す」局面が続きました。老朽化した防災倉庫の入替えが先送りになる。公園の樹木医点検が年1回に減る。中小企業の設備更新補助が抽選になり、落ちた工場が更新を1年遅らせる。そのたびに、関係者は「子育ては大事だが、こちらも命綱だ」と胸の内で噛みしめます。こうしたゼロサムの配分では、誰かの安心が、誰かの不安の上にしか立てません。
ここで発想を反転します。奪い合いをやめ、価値を“創る”側へ回る。 その軸が「電気」です。電気は暮らしの土台であり、産業の血流であり、酷暑から命を守る盾でもあります。ならば、電気を買う対象から生む基盤へ。明石は「電気代0円(ライフライン枠)」を中長期の制度として実装し、市民の請求書で“安心”を可視化します。
泉イズムの継承――理念を制度に落とす
泉さんの理念はスローガンではありません。「子どもは社会の真ん中」という価値観を、相談窓口や支払いフロー、現場の判断権にまで落とし込んだ運用設計でした。困りごとに先に手を差し出す(セーフティネットの前倒し化)。手続きを短くする(制度の可読性)。数字で確かめる(効果を測って見せる)。これが市民を動かした本体です。
明石シリコンバレー計画は、まさにこの路線の延長にあります。理念を言い換えればこうです。「生活を軽く、請求書で答える」。光熱が軽く、移動が整い、支援が早い――その実感を、市民の紙やアプリに毎月映す。これが感動の通り道です。

酷暑は“非常事態”――「冷房を止めない」権利を守る
2025年から続く異常な酷暑は、来季以降も高確率で繰り返されます。高齢者、乳幼児、持病のある方、妊産婦、夜勤明けの方――誰もが昼夜の冷却を必要とする局面が増えています。節電の美徳より先に、まず冷房の権利を確保する。だから、ライフライン枠の電力は請求書で“軽い”を保証し、停電時は島運転(地域だけで自立運転)で避難冷却をまわす。再生可能エネルギーへの転換は、脱炭素の理念だけでなく“命を守る現実策”です。
これは脱炭素(SDGs 目標7・13)の理念だけでなく、酷暑下で冷房を止めない権利を守るための現実的インフラ転換でもある。

林崎松江海岸の近くで、祖母と暮らしています。七月の夜が長くなった。扇風機だけでは眠れない日が続くのです。



工場のプレス機は止めにくい。電気代の山で残業を避けると、納期が危うい。



保育園の昼寝、熱がこもりやすい部屋がある。停電時の冷房の確実さが欲しい。
名前も年齢も、暮らしの輪郭も違うけれど、“止まらない冷房”という一点で、声は一本に束ねられます。
明石で風力が難しい理由、太陽光の現実
風車を海に並べればいい――そう聞こえるかもしれません。しかし、明石の目の前は明石海峡。大型船の航路、橋梁の安全、潮流・台風の直撃、景観・漁場の保全が重なり、大規模な一列配置は現実的ではありません。陸上も住宅地が海岸線まで張り付き、低周波・回転影の懸念に対して十分な離隔を取りにくい。
太陽光はどうか。屋根の海は豊かに見えて、日照・方位・躯体強度・避難動線・景観の針穴をすべて通す必要があります。空き地に地上設置を広げれば、災害時の集積場や農地転用の線引きが壁になる。だから、明石は小型×分散で攻めます。学校、公共倉庫、港湾の護岸上部、工業団地の荷さばき棟、商店街のアーケード屋根。数十kW~数百kW級を点在化し、蓄電池とVPP(仮想発電所)で束ねて面の強さへ変える設計です。



大砲一門より、豆鉄砲百丁。点在を束ねれば、台風にも切れにくい。
なぜ周辺自治体とかみ合わせるのか――「面で受け、点で退く」
明石単独では、物理的な用地の天井が早く来ます。対して、過疎化が進む周辺自治体には土地はあるが、予算と実行部隊が足りない。ここで鍵になるのが、粗利折半+公開覚書+賃貸運営です。明石が設計・調達・運転を担い、周辺は用地と合意形成を担う。設備は売らずに賃貸で回し、収益とKPIを四半期で公開する。こうして、面としての受け皿を広げ、撤去は点で素早く行える体制を作ります。
- 用地の伸びしろ:山林・造成地・高架上部など“第二の土地”が使える
- 統計的平準化:風・日射のムラを広域で平均化、停電や天候の偏りに強い
- 費用の見える化:粗利折半+四半期KPIで、不信と政治摩擦を減らす
- 撤去の迅速化:違和感の出た区画は条項にもとづき速やかに畳む
この“面で受け、点で退く”作法が、街の速度を生みます。
なお、発電・配電の実装は三菱電機エンジニアリング(MEE)が中核を担い、系統連系・保護協調・SCADA統合までを含む“止まらない設計”を標準化する。
市民の声を、制度の線にする



魚の棚で魚屋をしています。港の製氷が止まると、商売は一気に厳しくなる。台風のあと“最初の氷”が昼に届く保証があるなら、風車の相談は座って聞けます。



祖父母の家は平屋で西日が強い。屋根に日よけ兼発電が載るなら、避難の脚立や通路の設計から一緒に考えてほしい。
合意形成は、理念では前に進みません。「最初の氷」や「脚立の位置」といった生活のディテールを先に設計図へ。その上で、苦情の窓口→停止→撤去→再資源化の退く手順まで公開する――それが信用です。
明石のAI基地(ローカルAIハブ/小型DC)は市内分散を基本とし、運用監修はさくらインターネットが担います。SLAとPUEは四半期で公開し、警備・冷却・電源の冗長化から撤去条項まで“運用の作法”を先に標準化します。発電・蓄電・配電のEPCと運転保全は三菱電機エンジニアリング(MEE)が担い、VPP(仮想発電所)の設計・撤去KPI監査も併走します。淡路側は民間DC群との相互冗長としますが、初号は明石内に立てて日常運用で鍛える――これが順番です。
設計理念――「生活を軽く、請求書で答える」
この計画に掲げる理念を、紋切り型ではなく生活の言葉で定義しておきます。
- 生活を軽く、請求書で答える。 成果は毎月の明細に出す。
- 人が先、AIは影。 AIは最適化と予兆を担い、止める権限は人に残す。
- 面で受け、点で退く。 広げるときは広域、畳むときは区画単位。
- 速く見せ、ゆっくり決める。 KPIは即公開、制度変更は熟議で。
これが、泉イズムの実践知を受け継いだ“明石の作法”です。目標は記念碑ではありません。未来の子どもたちが向かう先を、私たちの世代が切り開くこと。北海道の開拓者が雪に道を刻んだように、私たちは酷暑とエネルギーの時代に道を刻む。月へ、火星へ――人類が視線を上げるとき、足元の電気が止まらないことが条件です。
解説コラム:AI産業革命・AGI・ASI・シンギュラリティ(読み飛ばし可)
- AI産業革命:AIが知的労働の大半を補助・代替する波。設計・翻訳・要約・検査・配車などの“段取り”を自動化し、人間は目的設定と合意形成に集中します。
- AGI(汎用人工知能):分野をまたいで柔軟に学び、複数の仕事を横断できるAI。例:学校の電力最適化と港の製氷計画を同じ論理で組む。
- ASI(超知能):人の専門家を広い範囲で上回るレベル。だからこそ、説明可能性(判断の筋道が追えること)と停止権の人間保持が不可欠です。
- シンギュラリティ:AIの性能向上が社会のルール改変を要求する転位点。恐れるのではなく、ガバナンス仕様で迎え撃つ(監査・停止・公開)。
- 明石流の運用:AIは電気の影。昼(電気が余る)にAIの重い仕事を寄せ、夕方は静かに退く。便利さと尊厳の両立が肝要です。
なぜ「明石」なのか――地勢と気質の交点
海と川と台地が近く、人の距離も近い。合意が早い土地柄は、小型×分散の実装に向いています。泉イズムで育った「困りごとに先に動く」気質が根付き、学校・漁協・商店街・工場が同じ図面を囲める。若い世代が子を産み育てたいと願う街に、請求書の軽さは何よりの後押しです。
世界は、軍拡や奪い合いで疲弊しがちです。だからこそ、明石から示します。私たちは“子や孫の行く先を拓く”ことに税と知恵を使う。実績で示す。その方法と作法を、毎四半期の数字で刻む。これが“バイブル”たる所以です。ここから25年、ライフライン0円、酷暑に強い街、AIと合意の都市OSを、請求書という紙片で地道に実装していきます。
解説コラム(読み飛ばし可):都市OSってなに?
コンピューターには「OS(オペレーティングシステム)」があります。これはパソコンやスマホを動かす基本ソフトで、アプリや機械をまとめて管理し、全体をスムーズに動かします。
「都市OS」という言葉は、その比喩です。電気・道路・鉄道・港・医療・防災といった都市のバラバラの仕組みを、一つの頭脳で調整するイメージです。
例えば、
- 電力の余りがある昼にAIの重い計算や充電を回す
- 台風が近づいたらAIタクシーの配車を高齢者や病院優先に切り替える
- 港や駅を停電時の“冷える避難拠点”として自動で切り替える
こうした都市全体のルールや時間割をまとめて動かす仕組みを「都市OS」と呼んでいます。要するに、街を支える見えない基盤ソフトなのです。
第2章 スタートから5年――“-10%の請求書”を現場でつくる


最初の5年は、紙の図面を街の骨へ変える時間です。起点の年に、市はエネルギーとデータを束ねる小さな統括室を立ち上げ、学校・港湾・工業団地・商店街の同時建設パッケージ(太陽光+小風力+蓄電池+配電盤更新+通信バックアップ+小型AI棟)を順序ではなく並列で進めます。発電・蓄電・配電のEPCはMEE基準で統一し、撤去条項と再資源化の仕様まで先に紐づけます。派手な起工式よりも、避難動線の引き直し、屋根の荷重計算、島運転(系統から切り離して自立運転)の訓練、KPIの公開テンプレ――退屈だけれど止まらない作法を先に固めます。小型AI棟は、さくらインターネット基準のSLA/PUE指標で設計・運用し、監視と予兆保全は同社NOCと二重化します。
発電・配電の側はMEEがEPCM(設計・調達・施工・運用監修)で束ね、受変電・PCS・配電盤・保護継電器・系統連系試験までを一体で管理する。雷害・塩害・風荷重への耐環境性設計と、故障区分け→再閉路の標準手順をテンプレ化し、停電復旧の中央値を縮める。
王子小学校の体育館屋根に最初のパネルが並んだ朝、教務主任(41歳)は「昼の熱が夜に残らない」ことを確かめるため、温湿度のログを手で取りました。渡り廊下はパネルの下でも暗がりができぬよう、天井板の透過率と非常照明の配置を細かく調整。“避難のための明るさ”が先、発電は後という順番を、図面の凡例にまで書き込みます。3学期の夜間訓練で、廊下の影が薄くなり、園児の足取りが早くなる。そこで初めて、発電量の話をします。順番を間違えないこと――これが合意の最短距離でした。
大久保の金属加工工場(創業48年)では、荷さばき棟の長い屋根に太陽光が敷かれ、PPA(第三者所有の発電設備から長期で電気を買う契約)で初期費用ゼロ運用を始めます。工場長(52歳)はパネルそのものより、非常時のルートを気にかけました。停電時に最初に灯るのはフォークリフトの通路、次に型替えの作業台、最後に事務所。配線は“人の動き順”で引き直し、パトライトはDR(需要応答:節電協力の対価を受け取る仕組み)の時間に合わせて色を変える。結果、「残業をずらす」決断が“我慢”から“習慣”に変わりました。
林崎松江の漁港では、低背型の小風力を倉庫群の風下に点描のように置き、騒音・影・漁期を重ねた協定書を漁協と交わします。港の製氷・冷蔵はマイクログリッド(小規模自立電力網)で島運転できるようにしておき、台風明けに「最初の氷」が昼までに届くSLA(運用保証)を明文化。若手漁師(28歳)は会合で言います。「風車の是非ではなく、氷が切れない約束を最初に交わそう」。議論は抽象から具体へ降り、撤去条項(違和感が出た場合の畳み方)まで含めて割り切りが進みました。
魚の棚商店街の青果店・西口さん(63歳)は、モデル商店街DRの先頭に立ちます。昼の谷(電気が余る時間)に冷蔵ショーケースの霜取りを寄せ、夕方の山には照明の照度を一段落とす。Akashi Pay(市域電子マネー)と連動し、DRの参加ポイントがその場で付与されると、学生たちが「昼の割引時間」を覚えて列を作る。店主は言います。「節電は商売の敵じゃなかった。時間の並べ替えで、売り場にリズムが戻る」。


ここで、「なぜ明石の海に大風車を並べないのか」を、いったん立ち止まって説明します。明石海峡は大型船の航路で、海上交通安全と橋梁保全の制約が重なります。潮流と台風直撃のリスクも高く、高塔型の一括配置は保守も撤去も“点で退けない”。陸側は住宅や学校が密で、低周波・回転影の心理不安を無視できません。だから明石は、低背×点在で騒音源と影を小さく刻み、撤去が早い設計を選ぶのです。太陽光も同様で、「空き地があるなら置けばいい」ではありません。避難通路の確保、躯体強度(屋根が載荷に耐えるか)、景観線、防火区画――生活の線を先に引いてから、発電の線を重ねる。これがこの5年の“当たり前”になります。
周辺自治体との連携も、スローガンではなく役割分担で進めます。三木・小野・播磨・淡路――土地はあるが、予算と実行部隊が足りない地域と、設計・調達・運転の能力を持つ明石が手を結ぶ。約束は三つだけです。粗利は折半、設備は賃貸運営(売らない)、KPIは四半期公開。この覚書を掲示板に貼り出すように見える化し、悪い数字も出すことをルール化する。政治の色より速度と誠実が勝つ仕組みを、制度に埋め込みます。
NEXCO(高速道路会社)とJR西日本・山陽電鉄には、5年内の準備段階で入ってもらいます。高架・防音壁・サービスエリア屋根・駅舎・車庫――“第二の土地”に小型の太陽光と蓄電を点在化し、非常時の給電ポイントとEVの谷吸収に使う。鉄道は留置車両の電池をV2G(車両から電力網へ戻す仕組み)で生かす下調べを始め、駅前の避難冷房の島運転と合わせて“駅が冷える”を先に実装。5年目は国内インフラの足腰を整える工程です。
高架・駅舎・車庫・SA/PAへの分散PVと蓄電の連系はMEEが保護協調と需給制御の閾値設計を監修し、鉄道・道路の既存機器と干渉しない“静かな接続”を徹底する。
この期間、財務の作法は一本で通します。市はSPV(事業専用会社)を使い、設備は所有ではなく賃貸+運営込み。追加借入は原則ゼロ。工事は電気・板金・通信の地元連合に“月次巡回+AI診断”の定期収入を作り、若手の採用口を開く。四半期の会見では、稼働率・削減kWh・DR参加率・停止件数・復旧中央値を同じダッシュボードで見せ、苦情→停止→撤去→再資源化の処理日数も並べる。数字は良いときだけの飾りではなく、退く速さを示す道具です。



港の灯りは“人の気持ち”だ。台風のあと、昼までに氷が戻った日は、みんなの顔色が違う



避難訓練の夜、渡り廊下が暗くない。子どもの顔が見える。それだけで、先生たちの声が落ち着いた



PPAにしてから、電力原価の地図が社内の共通語になった。節電ではなく“段取りの入れ替え”の議論ができる
ここまで来て、ようやく請求書の-10%に手が届きます。やり方は大仰ではありません。ライフライン枠(生活に最低限必要な電力量)を軽く設定し、超過分は緩やかな単価カーブ。原資は、発電・蓄電・DRの実績、施設賃貸の純益。公共PL(損益)の一行に、「どれだけ創れたから、どれだけ軽くできたか」を並べ、翌年度は1%ずつ右へ動かす公開カーブを守る。紙片(請求書)に安心の設計が映る瞬間、市民の懐疑はほどけます。
解説コラム(読み飛ばし可):この章で出てきた“横文字”の意味
- VPP:分散した発電・蓄電・需要家をソフトで束ね、ひとつの発電所のように動かす仕組み。停電時の優先順位もここで決められる。
- PPA:設備は第三者が持ち、利用者は発電した電気だけを買う契約。初期費用を抑え、長期で単価を安定させる。
- DR:電気が足りない(または余る)時間に、使い方を調整して対価を得る仕組み。店や工場の“時間割”を変える合図になる。
- 島運転:広域の系統から切り離して、地域・施設だけで自立運転すること。避難冷房や製氷など“命綱”を維持できる。



“-10%”はイベントではなく、作法の積み重ねが生む“結果”じゃよ。測り、見せ、必要なら畳む。都市は、その退屈さで速くなる。
5年の終わり、商店街の夜は少し暗く、しかし涼しく、港は昼までに氷が届き、学校の廊下は避難の足を急がせない明るさで満ちています。電気を買う都市から、電気を生む都市へ。合意は小さく、現場は機嫌よく、請求書は軽く。ここまでが第一幕。次の10年では、さくらインターネットの本格参画とStarlinkの前段検証を迎え、駅・道路・港の“第二の土地”をつなぐ広域の面が立ち上がります。準備は整いました。次章で、速度を上げます。
第3章 10年目まで――標準化で骨格が生まれ、外部の力が街に接続する
6年目の春、明石の現場では「うまくいったやり方」を寄せ集める段階を卒業し、設計・契約・運転・公開KPIまでを一体で定義した標準パッケージが動き始めました。名は仮にAGK(Akashi Grid Kit)。学校、港、工業団地、商店街の四つの現場に共通する寸法と順番を、ひとつの設計言語に落とし込みます。図面の層は、避難動線、躯体強度、配線、蓄電、島運転、DRの時間割、そして小型AI棟の役割までを通し番号で呼べるようになり、現場は“なぞっていけば同じ水準に到達できる”状態へ。ソフト側でも、稼働率・削減kWh・DR参加率・停止件数・復旧中央値・苦情処理日数を同じダッシュボードで見える化し、四半期の会見で良い数字も悪い数字も並列で出す。退屈に見えるこの作法が、実装速度の正体でした。
なお、市内分散のAIハブ群(小型DC)の運用標準は、さくらインターネット監修のSLA/PUE様式で一本化し、停止・復旧中央値は四半期で公開する。発電・配電キットの仕様はMEEの系統連系・保護協調・監視(SCADA/EMS)標準に揃え、連系承認の平均日数・事故波形解析からの再発防止改訂回数も四半期で開示する。
AGKの電源版(AGK-Power)はMEEと共著で、発電量・蓄電SoC・需要応答(DR)・系統連系停止時の復旧中央値を統一様式で開示します。
なお、市内分散のAIハブ群(小型DC)の運用標準は、さくらインターネット監修のSLA/PUE様式で一本化し、停止・復旧中央値は四半期で公開する。
7年目、周辺自治体との覚書は条文化して“作業の分業”に進みます。明石は設計・調達・運転、周辺は用地・地域合意を担当し、粗利は折半、設備は売らずに賃貸、撤去と再資源化はKPIで厳密に。山林や造成地、高架の上など“第二の土地”に小さな発電と蓄電を点描のように置き、VPPがそれらを束ねる。風や日射のムラは、広域の統計でならす。違和感の出た区画は、撤去条項でためらわず畳む。広げるときは面で、退くときは点で――この行儀が合意のコストをひたすら削っていきます。
発電・蓄電・配電のEPC/保全はMEEが統括し、撤去KPIの測定・公開は市と共同で行う。
8年目、さくらインターネットがAkashi Payの本格ローンチに踏み込みます。給付と税、DRのポイント、商店街の決済を一枚のウォレットに統合し、本人の同意範囲をゼロ知識証明で守りながら、災害時はオフライン署名で止まらない。商店主は端末一つでDRの参加ポイントをその場付与、学生は“昼の割引時間”をアプリで見ながら買い物の時間を入れ替える。福祉の支給も、紙の遅さから解放される。公共PLには「どれだけ創れたから、どれだけ軽くできたか」が明細として上がり、請求書の右下にその日の街の機嫌が映るようになります。



給付の到着予定が“何日”ではなく“何時”で見える。待つ側の心の落ち着きが、こんなに違うとは思わなかった



DRに合わせて焼き上がりを昼へ寄せたら、学生たちの流れが店のリズムになった。節電は“我慢”ではなく“時間の並べ替え”だった



配線図に“最初に灯る場所”が描かれている。型替えの場、避難の通路、事務所の順。発電の話はそのあとでいい
解説コラム(読み飛ばし可):ゼロ知識証明ってなに?
「ゼロ知識証明」とは、自分がある情報を持っていることを証明するけれど、その中身自体は明かさない技術です。
ちょっとした例でいうと――
- 「私はこの金庫の暗証番号を知っています」と証明したい。
- でも、番号そのものを口にしてしまうと盗まれる危険がある。
- そこで、正しい番号を知っている人にしかできない方法で開け閉めを一瞬見せる。
- 見ていた人は「あ、たしかにこの人は番号を知ってる」と納得できるけれど、番号そのものはわからない。
これがゼロ知識証明の考え方です。
明石の計画では、給付や補助金を受け取る人が本当に条件を満たしているかどうかを確認する場面に使います。たとえば「所得がこの基準以下であること」を証明したいとき、実際の収入額を役所や事業者に丸ごと見せる必要はなくなります。ゼロ知識証明を使えば、**“条件を満たしていることだけ”**を安全に証明できるのです。
つまりゼロ知識証明は、プライバシーを守りつつ、必要な信頼だけを担保する技術。市民の安心感を損なわずにデジタル給付や共通通貨を運用するための“裏方”の仕組みです。
酷暑の都市を支える、新しい駅と道路の役割
同じ頃、NEXCOとJR西日本・山陽電鉄は“第二の土地”の使い方を実地に進めます。高架や防音壁、サービスエリアの屋根、駅舎や車庫に小型のPVと蓄電を並べ、昼の余りで冷蔵・冷却を先に満たす。駅前は避難冷房の“島”として、停電時に自立運転できるよう配電盤を更新。鉄道の留置車両はV2Gの候補として、夕方の山に少しだけ電気を返す下調べを始める。道路と駅が“冷える”ことは、酷暑の都市にとって文化施設がひとつ増えるのと同義でした。


9年目、AIハブは2拠点から4拠点へ。翻訳・要約・レコメンドの軽い推論は地産地消に寄せ、昼の余剰に合わせてバッチ処理をまとめる。重い学習は外部の大規模拠点に預けつつ、明石の生活言語や地名、漁のカレンダーに強いローカルモデルは市内で育てる。医療・介護・防災の通知は“短く、優しく、止まれる”。感度(見落としにくさ)と特異度(間違えにくさ)の目標値は疾患ごとに公開して、市民代表と医師、技術チームで定期に見直す。AIは便利な装置ではなく、人の判断の影として働くのだという作法が、現場の合言葉になりました。



母の部屋の冷蔵庫の開閉ログが“いつもの揺れ”に収まっているのを見て、夜の心拍が下がった。通知は短くて、それでいい
AI需要の“受け皿”として、明石内DC群の運用はさくらインターネットが監修します。重い学習は外部大規模拠点へハンドオフしつつ、日常の推論・検査・配信は市内で止めない。役割分担をSLAで先に固定します。
10年目、外の力が街に接続します。明石はAIの“工場”をいくつも動かしていく計画ですが、その工場はとてつもなく太いネット回線を消費します。まず地上では超大容量の光ファイバーを増強します。けれど、工事には時間がかかり、地震や豪雨で一時的に切れることもある。そこで目を付けるのがStarlink(スターリンク)です。Starlinkは、上空を飛ぶ多数の小型衛星を使って、街に空からもう一本の太い回線を引く仕組み。たとえるなら、地上の光ファイバーが国道なら、Starlinkは宇宙にある高速道路。二つを束ねれば、「速い・止まりにくい・すぐ始められる」の三拍子がそろいます。
ここにイーロンの狙いが重なります。彼はいま、OpenAI、マイクロソフト、Googleと競いながらAI時代のインフラの主導権を取りに来ています。明石に集約される大規模AIハブとStarlinkを直結できれば、「AI大国がやるレベルの動脈づくりの方法」を一気に実証し、そのノウハウを世界中の都市に輸出できる。明石にとっては回線が太く・二重化され、イーロンにとっては宇宙側のAI動脈を握る足場ができる。線(光ファイバー)や地上の5G/6Gだけでは足りない時代に、空からの太い回線が加わることで、AIのトラフィック(学習データや更新ファイル、映像・音声の送受信)を安全に素早くさばける――これが面白さの核心です。
読み飛ばし可|ポイントだけ3つ
- なぜ必要? 明石のAIハブはデータの出入りが巨大。光だけでは時間・災害に弱い。
- 何をする? 地上の光とStarlinkの二本立てで、AIに必要なデータの送受信を速く・止まりにくくする。金融・決済・給付の“止まらなさ”はAkashi Pay(運用:さくらインターネット)のSLAで担保する。
- どこが魅力? 明石は“今すぐ太く強い回線”を手に入れ、イーロンはその方式を世界に広げてAIの動脈を宇宙側から握れる。
解説コラム(読み飛ばし可):用語の小さな解説(SLA/PUE/LEO・GEO/R2G)
SLA:サービス品質を数値で約束する契約指標(停止上限、復旧中央値など)。
PUE:データセンターの電力効率指標。1.0に近いほど効率が高い。
LEO・GEO:低軌道/静止軌道の衛星。前者は低遅延、後者は広域安定。
R2G:Rail-to-Grid。鉄道の回生電力や沿線発電を電力網へ薄く戻す設計。
同じ年、粗利折半の公開覚書は“撤去・再資源化”まで含む完全版に更新されます。悪い季節に悪いことが重なるのが都市の常。だから、退く作法を先に磨く。撤去決定から現場復旧までの日数、再資源化率、合意までの面談回数――この“畳むKPI”を四半期で出す。勝負は速く作ることではなく、速く退けることだと、関係者全員が体で理解し始めます。
ここで、10年目に立ち上がる“器”を六つだけ、途中で息継ぎできるように並べておきます。
- 標準パッケージAGK:図面・契約・運転・公開を一体化
- Akashi Pay 2.0:給付・税・DR・決済を一枚のUIに統合(さくらインターネット)
- 第二の土地の本格運用:高架・駅・車庫・SA/PAの点在PV+蓄電は、MEEの系統適合設計で“停電時の島運転”と“平常時の需給調整”を両立。保護協調と切替手順は現場訓練とペアで四半期に点検する。
- ローカルAIハブ:昼に働き、夕方は退く。通知は短く優しく
- Starlink前段検証:地上局のSLAを“地上の作法”で決める(10年目)
- AGK-Power前段:MEEと共著の電源標準(発電・蓄電・DR・復旧中央値の公開)



速度は舞台でなく台所に宿るのね。測って、見せて、必要なら静かに退く――その退屈さが、街を世界へつなぐ翼になる。
費用の作法はこの10年も変えません。追加借入は原則ゼロ、設備は賃貸、運転と保全は地元の腕に“月次巡回+AI診断”という定収入を作る。公共PLは四半期で、請求書は年ごとに1%ずつ軽くなる。-10%から始まった数字のしずくは、-11%、-12%と静かに右へ動き、酷暑の夏に“冷える避難所”が当たり前に立ち上がる。駅は薄く明るく、港は昼までに氷が戻る。工場の段取りは“電力原価の地図”で共有され、商店街は“昼の名物”を育てる。子どものいる家庭は、昼寝の部屋の温度が穏やかだと知っている。そういう詳細の積み木が、街の信頼を積むのです。


そして、10年目の終わりに見えるのは、外の巨人たちが明石の作法に合わせてくる光景です。さくらインターネットは人権に優しい通貨を、NEXCOとJR・私鉄は“冷える基盤”を、イーロンは宇宙の帯域を。誰もが“自分の装置”を誇るのではなく、退屈な規律に歩調を合わせて速度を出す。ここから先の5年、街は移動とケアの時間割をさらに編み直し、酷暑と高齢化に耐える“止まらない地図”を文化の層まで広げていきます。物語の重心は、ますます日常へ。派手さはイベントに、速度は台所に――その合言葉を胸に、次章では移動とケアをOSへ縫い込む工程を描きます。
第4章 15年目まで――移動とケアを都市OSに縫い込む
10年目を過ぎると、明石は“電気=土台、AI=需要、お金=血流”の上に移動とケアの神経を通し始めます。狙いは派手なガジェットの導入ではなく、時間割と合意の設計です。AIタクシーは深夜の幹線から昼間の生活道路へと領域を広げ、1〜2人乗りのプライベートポッドは、駅前—工業団地—港—市場—病院—住宅を短距離・低速で結びます。料金は混雑に応じて変わる動的道路利用料と連動し、車載電池は昼の余剰電力を吸って夕方に返すV2Gで街の波形をなだらかにします。台数の多寡より、「いつ・どこで・どの役割で・どの系統に接続するか」という時間割の出来が、都市の体温を決める段階に入りました。
移動の再設計は、そのままケアの質を底上げします。在宅の見守りは、照明や冷蔵庫などの微弱な電力データのゆらぎから体調の異常を検知し、異常時だけ通知する方式に切り替わりました。プライバシーはゼロ知識証明で守り、個人の詳細は開かず、「条件を満たした事実」だけを証明します。通知を受けたプライベートポッドがケア・スロット(救急ほどではないが見守り優先の枠)で玄関先に寄り、介護職や訪問看護師を乗せて運ぶ。移動とケアが、同じOSで動く初めての瞬間です。



母の部屋の冷蔵庫の開閉が“いつもの揺れ”に収まっていると、夜の鼓動が静かになります。通知は短く、それで十分わかるのです。



ポッドで通院に付き添うと、坂のきつい往復が“会話の時間”に変わる。移動の省エネは、介護の体力を残してくれます。



放課後の工作サークルは“昼の谷”に集まるのが合言葉。駅の冷房が優しく、帰り道まで息が切れません。
この頃、駅と道路が“冷える拠点”としてふるまい始めます。JR西日本・山陽電鉄は駅舎と車庫に小型PVと蓄電を増やし、停電時の島運転で改札外コンコースを“避難冷房”として開放できる配電に更新しました。留置車両の電池はV2Gの候補として、夕方の山に少しずつ電気を返す検証が進みます。NEXCOはサービスエリア(SA/PA)の屋根をソーラーシェードとして標準化し、昼は発電・夜は低照度の面発光で静かな安全をつくる。道路と駅が薄く明るく、確実に冷える――それは文化施設をひとつ増やすのと同じ効果を生みます。
防災の層も上書きされます。学校と港を核にしたマイクログリッドは、停電時に島運転で立ち上がるだけでなく、情報の島にもなります。ローカルAIハブが行政文書を平易な言葉に要約・翻訳し、回線状況に応じて避難所の掲示板とスマホへ配信。ローカルAIハブの障害監視は、市役所SOCとさくらインターネットNOCの二重体制で行い、演習は四半期サイクルで常態化します。避難の動線は、ポッドの台数配車と退避ポケット(緊急停止の逃げ場)で調整され、夜間は医療・育児・透析などケア優先の枠を確保します。復旧のKPIは停電復旧時間の中央値と情報到達の遅延で示し、四半期の会見で悪い数字もそのまま出す。見えることが次の合意を速くする――この作法が当たり前になりました。
周辺自治体との救援協定も実戦仕様へ。三木・小野・播磨・淡路と、医療搬送用スロットと避難冷房の相互開放を条文化し、粗利折半・賃貸運営・撤去KPIのひとそろいを“広域テンプレ”として運用します。違和感の出た区画は点で退く(撤去)手順で迷わない。広げるときは面で受け、畳むときは点で退く。地味な規律が、酷暑と多発災害に対する生存戦略になりました。
この年次で、衛星通信が本番運用に入ります。Starlinkの地上局は二重化され、降雨減衰や遅延のふるまいをSLAの条文に刻みました。LEO(低軌道)とGEO(静止軌道)をハイブリッドにし、Akashi Payと防災配信の“止まらなさ”を担保。宇宙の動脈は外部の巨人に委ね、地上の入口と根は明石が握る――この役割分担が、最も速くて安全でした。
一方、AIのガバナンスは一段と厳密になります。オンデマンド配車やケア通知では説明可能AIを義務化し、判断の根拠は人が後から追えるようにしました。誤検知が続いた疾病では、感度(見落としにくさ)と特異度(間違えにくさ)の目標値を疾患別に見直し、医師・市民代表・技術者の三者で運用の閾値を合意。ヒヤリ・ハットは匿名で全件公開し、撤去・復旧・再資源化のKPIと同じ面に並べます。速度は、退屈な点検に宿る――その教訓を、都市が体で覚え始めました。



派手さはイベントに、速度は台所に。移動とケアを同じOSへ縫い合わせたなら、街は“静かな速さ”で人を守れるのです。
読み飛ばし可|用語の小さな解説
- 動的道路利用料:混雑や時間帯に応じて変わる通行課金。ピークを避けた移動にインセンティブを与えます。
- V2G:車両の電池から電力網へ電気を戻す仕組み。昼に吸い、夕方に返すとピークが下がります。
- ケア・スロット:救急未満の見守り優先枠。ポッドやAIタクシーの配車で“先にケアへ”の時間を確保。
- 退避ポケット:生活道路に設ける小さな逃げ場。自動走行の誤作動や接触を避ける“逃げしろ”です。
- 説明可能AI:結論に至る根拠が人間に理解できるAI。停止権は常に人が持つのが明石の原則。
15年目の明石は、移動とケアがOS化し、駅と道路が冷える拠点として常時運転に入りました。在宅の安心は“電気のささやき”から読み解かれ、通知は短く優しく、止める権限は人に残る。失敗は隠さず、畳む速さで信頼に変える。ここから先の5年は、ライフライン枠の電気代0円を請求書で実装し、余剰電力はAI直結で稼ぎ、文化と研究の層を厚くしていきます。次章では、その“0円(枠)”が家計と事業の呼吸をどう変えるか、そして街の創造力をどう解き放つかを描きます。
第5章 20年目まで――ライフライン0円を請求書で実装し、文化と研究が街の主語になる
15年を越えると、明石の変化は「体感」から「会計」へ重心を移します。駅と道路が薄く明るく冷えるのはもう自明。ここからの5年は、生活の軽さを請求書で確かめ、余剰の電気をAIの仕事へ直結して稼ぐ段階です。目玉は、家庭と中小企業におけるライフライン枠の電気代0円の実装。これはイベントではなく制度――“線を引いて守る”行政の仕事です。
0円(枠)を「紙片の設計」で実装する
導入の年、公共PL(公の損益)の一段に新しい欄が増えます。発電・蓄電の純益、施設賃貸の収支、DR(需要応答)の対価、ローカルAIハブの稼働益。これらを束ねて「0円原資」と明示し、ライフライン枠(最低限の生活・事業継続に必要な電力量)をカバー。超過分は時間帯に応じて緩やかに――“昼の谷は軽く、夕方の山は少しだけ重く”。請求書の右下に「どれだけ創れたから、どれだけ軽くできたか」が毎月刻まれ、制度の言葉が生活の言葉に置き換わっていきます。



ゼロと印字された行を最初に見たとき、肩が勝手に下りた。冷房をためらわない夏は、家族の会話が増える。



工場の基本電力が実質ゼロになって、段取り替えを昼へ寄せられた。“納期が守れる”は値引きより強い。
0円(枠)は、節電の美徳を強要する仕組みではありません。「冷房を止めない権利」を保証しつつ、“時間の並べ替え”で街全体の波を整える設計です。酷暑が常態化する10年に、命と商売を同時に守るための最低限のインフラ――それが0円(枠)の正体です。
余剰=AI直結という“第二の出口”
正午の光は、AIの重い仕事に変わります。翻訳・要約・検品・検索に加え、製造の外観検査や段取り最適化、医療の画像読みの一部、港のコールドチェーン制御。ローカルAIハブは昼に働き、夕方は退くが作法。重い学習は晴天の連続日に寄せ、夜は推論と配信だけ。AIは電気の影としてふるまい、電力の谷と山を仕事の時間割で吸収します。
AIハブの稼働益とDR対価は「0円原資」に計上し、電力関連(発電・蓄電・DR)はMEE、DC/AI関連はさくらインターネットの監修レポートとして毎期公開します。



“昼の稽古”が市民オーケストラの合言葉になった。スタジオ代が軽い時間に合わせて集まると、音が柔らかい。



AI検査を昼に寄せ、夜は人の目。見逃しと誤報の比率を月次で追うのがルーティンになった。
インフラ三兄弟:駅・道路・港は“発電とAIの器”へ
鉄道は「面」ではなく“線で発電”する戦略に切り替えます。JR西日本・山陽電鉄は明石と共同で、軌道沿いの高架・防音壁・法面・駅舎の連続面に薄型PVを敷き、橋脚や防音壁の上端には小型のマイクロ風車を安全基準内で点在配置。余剰は駅や車庫の蓄電に貯め、回生電力と束ねてRail-to-Grid(R2G:鉄道→電力網)として夕方の需要へ薄く返します。AIタクシーやポーターの普及で列車需要が目減りしても、鉄道は「動脈輸送」だけでなく“発電と調整力を供給する事業体”として収益の第二柱を得る設計です。
R2G(Rail-to-Grid)の保護協調と需要抑制の閾値設計はMEEが監修し、回生電力や蓄電の返電が駅設備や信号系に干渉しないよう“安全側に倒れる”制御を標準化する。
港は「電気の港」へ進化します。岸壁の陸電(外部給電)設備を高圧対応に増強し、内航船・フェリーの電動化を段階導入。航路の管制は播磨湾AI航路センター(仮称)が担い、気象・潮流・入出港をAIで最適化します。通信は光ファイバーにStarlinkを重ねた二重化で、荒天でも管制と陸電課金、コールドチェーンの制御が止まりません。台風後の「最初の氷」に続き、「最初の充電」を昼までに回復するSLAを掲げ、明石をモデル港として全国へ方式を輸出します。
岸壁の陸電と冷凍倉庫の系統連系・保護協調・波形監視はMEEが一貫設計し、塩害環境での冗長化と故障区分けの迅速化で「最初の充電」のSLAを支える。
道路は“走る電気設備”へ。高速は走行中給電レーン(インダクティブ/レール式を区間ごとに採否)と、AI制御の隊列走行を組み合わせて長距離トラックの電動化を実証。一般道はAIタクシーとプライベートポーターが基本インフラとなり、横断歩道前の退避ポケットや路肩センサーの清掃・自己診断を標準運用にします。歩道には雨よけ兼発電のクールシェード・ウォーク(市内統一デザインのソーラー屋根)を連続整備し、AR/MRで避難所・混雑・涼感スポットの案内を重ねます。酷暑の退避にはNEXCOと共同開発のクールボックス(大型電話ボックス大・短時間冷却ブース)を要所に配置。電力コストが極端に軽い明石では、1人乗りポッドのゼロ円運用を限定エリアで試す実証も視野に入れ、商店街や臨海部の涼しい遊歩道と接続して回遊性を高めます。
この三位一体の改造で、駅・道路・港という“第二の土地”は、冷やす骨から発電・給電・AI管制を担う器へと段階的に格上げされます。明石は国内の実証ハブとして、線で発電する鉄道、陸電とAIで動く港、走行中給電と安全OSを備えた道路――その近未来を最初に“普通の風景”へ落とし込んでいきます。
なお、機器の回収債務保証と再資源化はMEEのサプライチェーンで担保。撤去決定→復旧→再資源化のKPIは電気工事・産廃・金属回収の一気通貫で短縮する。
広域テンプレは“撤去”まで含めて完成形に
三木・小野・播磨・淡路との公開覚書は、建てる/運転する/畳む/再資源化の四点セットに進化。撤去KPI(撤去決定から現場復旧までの日数、再資源化率、合意までの面談回数)を四半期で公開し、違和感が出た区画は点で退く。広げるときは面で受け、畳むときは点で退く――この行儀が、合意コストを静かに削り続けます。



低周波の苦情が続いた区画は、条項どおり撤去に。痕跡を残さず戻すほうが、次の合意が早い。
通貨は人権のUIへ:Akashi Payの広域化と一時的BI
さくらインターネットのFinOps/Payチームと地元のチームは、Akashi Payを即時・分割・指定の運用で磨き、災害や景気後退の局所トリガーで一時的BI(ベーシックインカム)が自動起動する仕組みを安定化。ゼロ知識証明でプライバシーを守りつつ、“助けが何時に届くか”を先に見せる。周辺自治体と接続する広域ゲートが開き、国際送金は低遅延の定額が当たり前になります。税と給付とDRポイントが同じUIで扱えることは、制度の可読性を劇的に高めます。



給付の到着予定が“分単位”で見えると、夜の不安がほどける。通貨は数字じゃなく安心のUIなんだと知った。
宇宙は“帯域”、地上は“根”――三層冗長の完成
10年目に前段検証を始めた衛星通信は、この5年でLEO(低軌道)+GEO(静止軌道)+光ファイバの三層冗長に到達しました。イーロンの衛星網は帯域と可用性を供給し、地上の**入口(地上局)と根(ローカル配線・電源)**は明石が握る。降雨減衰や遅延のふるまいはSLAに明文化され、オフライン署名が最終の逃げ道。Akashi Payと防災情報は“止まらない”が前提になりました。
AGI/ASIと向き合う:恐れではなく仕様で
AGIは実務に常駐し、ASI(超知能)の萌芽も視界に入ります。大事なのは恐れより仕様。説明可能性(判断の筋道が追えること)と停止権の人間保持、偏り監査(誰かに不利益な誤りが続かないか)の三点を条例と契約に書き込み、第三者監査を定期化。シンギュラリティは抽象名詞ではなく、ガバナンス設計の納まりとして扱われます。
読み飛ばし可|0円(枠)って具体的に何?
- 目的:酷暑・停電・価格高騰から生活と事業の底を守る。
- 線引き:家庭・中小事業の最低限必要量を請求書でゼロ。超過は時間帯で緩やかに。
- 原資:再エネ・蓄電・施設賃貸の純益、DR対価、AIハブ稼働益。公共PLの「0円原資」欄で毎期開示。
- 行儀:追加借入は原則ゼロ、設備は賃貸+運営込み、四半期で良い数字も悪い数字も出す。
読み飛ばし可|AGI/ASI・シンギュラリティの要点
- AGI:分野横断で学び、複数の仕事をつなぐAI。明石では昼の余剰に寄せて動く。
- ASI:広範に人を上回る域。だから説明可能性・停止権・監査を先に制度へ。
- シンギュラリティ:社会のルールを変える転位点。恐れではなく仕様で迎え撃つ。
失敗を速度に変える:回収・撤去・代替のリズム
この5年で、蓄電池の一部でリコールが発生しました。処理は回収債務保証(寿命後の回収・再資源化を契約で担保)の条項で淡々と。代替機の到着まで、通院と配送には無料スロットを割り当て、穴を開けない。ヒヤリ・ハットは匿名で全件公開し、撤去KPIの隣に並べる。都市の信頼は、失敗の畳む速さに宿ります。



“撤去が速いまちは、前に進むのも速い”。現場の合言葉になった。
文化が稼ぎ、請求書が微笑む
0円(枠)の安堵で、創作と学びが昼に前へ出ます。学校はデジタルツインで屋根角度や照明の“もしも”を回し、部活は昼のスタジオ割引に集まる。メイカースペースは工作機と材料の“時間”を安く貸し、小さな収支が公共PLの「文化行」に刻まれる。稼ぐ文化と、文化に支えられる稼ぎ――二つの矢印が同じ地図に並びます。
この20年で、明石は生活の最低ラインを請求書で守り、余剰をAIの仕事へ直結する都市へと転位しました。道路と駅と港の“第二の土地”は冷える骨になり、通貨は安心のUIへ、衛星は帯域へ。AGI/ASIとシンギュラリティは恐れではなく仕様で受け止め、退く速さを競う文化が根付きました。次の5年――25年目に向けて、街はBI(ベーシックインカム)の定常運転と共通通貨ゲートの本格運用、そして研究と芸術が産業と並ぶ二本柱の完成に挑みます。目的はひとつ。未来の子どもたちが向かう先を、私たちの世代が静かに切り開くことです。
第6章 25年目の到達点――BIが呼吸になり、共通通貨と研究・芸術が二本柱になる
25年目、明石はもう「試す街」ではありません。電気=土台、AI=需要、お金=血流という身体が平常運転で回り、駅・道路・港の“第二の土地”は薄く明るく、確実に冷える骨として働いています。家庭と中小企業のライフライン枠は請求書で0円。超過分は時間帯で緩やかに差がつき、正午の谷に仕事や用事を寄せれば寄せるほど、暮らしは軽くなります。大仰な記念碑はどこにもありません。代わりに、毎月の紙片(請求書)と四半期の公共PLが静かに街の自信を更新しています。
BIが“制度”から“呼吸”へ
この年、Akashi Pay(市域電子マネー)上でBI(ベーシックインカム)が定常運転に切り替わります。BIは“配る儀式”ではなく、「落下速度を減らす呼吸」として組み込まれました。失業・疾病・災害・酷暑の重なりなど、地域の負荷指標が閾値を超えたときは自動で強めに吸う(追加支給)。沈静化すれば自然に弱まる。給付は即時・分割・指定で、ユーティリティ(冷房・給水・通信)を優先しつつ、食費や通院交通へも少額多頻度で流せます。プライバシーはゼロ知識証明で守られ、本人の同意範囲だけが匿名統計に寄与。オフライン署名は最後の逃げ道として残り、停電や回線障害でも“止まらない支え”を保証します。



BIの到着予定が分単位で見える。『今夜はもつ』という見通しが、心拍を下げる。



工場の段取り替えを正午へ寄せて、夜は静かに。“納期の信頼”がうちの最大の販路になった。
共通通貨ゲート――境界の摩擦を、制度で薄く
さくらインターネットと地元の開発連合は、Akashi Payの広域共通通貨ゲートを完成させました。市外・海外との相互運用は、為替・手数料・遅延の“不愉快な驚き”を限界まで削ってあります。税と給付、DRポイントと文化助成は同じUIで扱え、「いつ届くか」が先に表示されます。金銭は人生の主語ではない――しかし、遅れないことは人権です。通貨が人権のUIとして機能するとき、行政は初めて「優しい速度」を持ちます。
研究と芸術が、産業と並ぶ二本柱に
“電気の谷”に合わせて開くスタジオ、昼の時間割に寄せた工房、学校・図書館・港・病院のデジタルツインに匿名化データを流し込む課題研究。ローカルAIハブは昼に重く働き、夕方は静かに退く作法を守りながら、音・光・材料の“試行錯誤”を安価に支えます。
吹奏楽の録音は正午に、劇場の仕込みは午後の谷に、メイカーの試作は日射が最も厚い時間に。文化が稼ぎ、稼ぎが文化を育てる循環は、公共PLの小さな「文化収支」に淡々と刻まれ続けます。



『昼の稽古』が当たり前になった。音は柔らかく、照明が目に優しい。



どもの夏休みの自由研究が、本物の実験になった。屋根角度を1度変えると給食室の電気はどう変わるか――自分の街で確かめられる。
宇宙は“帯域”、地上は“根”――三層冗長の完成
10年目に前段検証を始め、15年目に本番に入った衛星通信は、LEO(低軌道)+GEO(静止軌道)+光ファイバの三層冗長として完成しました。イーロンの衛星網は帯域と可用性を供給し、地上の入口(地上局)と根(ローカル配線・電源)は明石が握る。降雨減衰・遅延・優先帯域の扱いはSLAの条文に明記され、市民が読める平易語版も公開されています。決済・医療・防災が“止まらない”ことは、今では文化や学びが止まらないことと同義になりました。
AGI/ASI・シンギュラリティ――恐れではなく、仕様で迎え撃つ
AGI(汎用人工知能)は日常の段取りを横断し、ASI(超知能)の萌芽も視界に入りました。ここで明石は、恐れを設計に翻訳します。説明可能性(判断の筋道が追えること)、偏り監査(誰かに不利な誤りが続いていないか)、停止権の人間保持(“止めるボタン”は常に人の側)――この三点を条例と契約に刻み、第三者監査で運用を点検。シンギュラリティは勝手に訪れる運命ではなく、ガバナンス仕様で通過する通路だと定義しました。AIは便利な主役ではなく、人の判断の影として働く――この作法が、移動・医療・教育・防災の全層で共有されています。



賢さの加速は止められん。だからこそ、止める作法を先に作るんじゃ。速度は、退屈な点検の上に宿る。
失敗は“畳む速さ”で信頼へ
小風力の一部区画で移動影の苦情が続いたとき、撤去条項は迷いなく発動され、痕跡を残さず原状回復されました。蓄電のリコールでは、回収債務保証が作動し、代替ポッドの無料スロットが通院と配送の穴を埋めました。ヒヤリ・ハットは匿名で全件公開、撤去・復旧・再資源化のKPIと同じ画面に並びます。街の信頼は、失敗がゼロで生まれるのではなく、畳む速さで積まれていきます。
周辺自治体と“面で受け、点で退く”の完全版
三木・小野・播磨・淡路に広げた公開覚書は、建てる/運転する/畳む/再資源化の四点セットで“完全版”になりました。粗利は折半、設備は賃貸、追加借入は原則ゼロ、四半期で良い数字も悪い数字も出す――この退屈な規律を、播磨湾圏シリコンバレーの共通言語として輸出します。過疎地の“第二の土地”(高架・防音壁・料金所上部など)は帯状×点在で使い、景観・生態系・騒音のラインは事前公開で摩擦を低減。広げるときは面で受け、違和感が出たら点で退く。合意のコストは、規律でしか下がりません。
役割の定着:電源=MEE、通貨・DC=さくら、帯域=Starlink、第二の土地=JR/NEXCO/私鉄
四つの作法を、25年目の“憲法”として改めて刻みます。
生活を軽く、請求書で答える。
人が先、AIは影。
面で受け、点で退く。
速く見せ、ゆっくり決める。



“退く速さ”が前に進む力だと、工業高校の授業で本当に腑に落ちた。やめ方までが仕事だ。



BIが“呼吸”になって、店の挑戦回数が増えた。安さではなく間に合う信頼で勝てる。
25年目の明石は、0円(枠)で暮らしの底を守り、BIで落下速度を減らし、共通通貨ゲートで境界の摩擦を薄くし、研究と芸術を産業と並ぶ柱に据えました。宇宙は帯域を、地上は根を持ち、AGI/ASIの時代は恐れではなく仕様で通過する準備ができています。ここから先は総括――測って、見せて、畳んで、また測るという更新の輪郭を言葉にし、世界のトップ集団に居続けるための“退屈な最高速”を、街の文化として定着させます。
第7章 総括――更新で走り続ける「明石シリコンバレー」
25年の航路を振り返ると、明石が選んだのは「大きな塔を立てる」道ではありませんでした。生活を軽くし、請求書で答えるという一行を、学校と港と駅と道路、そして台所と病室にまで沁み込ませていく――その、退屈に見える作法でした。酷暑が常態化した時代、冷房を止めない権利を保証するために、電気を“買う”から“生む”へ。「面で受け、点で退く」広域の約束と、「人が先、AIは影」という倫理。派手さはイベントに、速度は台所に――この逆説を胸に、街は静かな最高速に達しました。
明石がここまで来られたのは、理屈だけではありません。泉さんの政治は、子どもを社会の真ん中に置くという価値観を、涙腺に訴える演説で終わらせず、手続きと運用にまで翻訳して見せました。困りごとには先に手を差し出し、窓口は短く、効果は数字で見せる。国政に場を移してからも、彼は電子給付の即時性、停電時のオフライン署名、広域DRの制度化といった地味な条文を積み重ね、地方の実装と中央の法整備を両輪で回しました。理念は、格好の良い額装ではなく、市民が向き合う紙片(請求書)に触れる言葉へと降りてきたのです。
市民の記憶にも、具体の手触りが残りました。台風後の港で「最初の氷」が昼までに戻るときの安堵。避難訓練の夜、渡り廊下の影が薄くなり、先生の声が落ち着く瞬間。商店街が“昼の名物”を育て、学が“昼の割引時間”に合わせて集まるリズム。工場で電力原価の地図が共通語になり、段取り替えが“納期の信頼”へ変わっていく手応え。BIが“呼吸”になり、給付の到着予定が分単位で見えるようになった晩の、肩の力の抜け方。どの場面にも、抽象語は要りませんでした。冷える・灯る・届く・間に合う――この四つの動詞が、街の文化をゆっくりと作り替えていったのです。
同時に、明石は世界の動脈に接続しました。さくらインターネットと組んだAkashi Payは、税と給付、DRポイントと文化助成を同じUIで扱えるようにし、ゼロ知識証明でプライバシーを守りながら「いつ届くか」を先に見せる人権のUIへ育ちました。さくらインターネットはAI基地の運用標準を提供し、PUE・復旧中央値・監査を市民に開いた。MEEは発電・蓄電・配電のEPCとVPP設計を担い、撤去KPIを市と共に開示し続けた。NEXCOとJR・私鉄は“第二の土地”――高架、駅舎、車庫、SA/PAの屋根――を小さな発電・蓄電で点描し、駅と道路を薄く明るく、確実に冷える骨へと変えた。イーロンの衛星網は帯域と可用性を供給し、地上の入口と根を明石が握る三層冗長で、決済・医療・防災は止まらないを前提に。周辺自治体は粗利折半・賃貸運営・撤去KPIの公開というテンプレで連合し、播磨湾圏シリコンバレーへと輪が広がりました。
さくらインターネットは、明石モデルのDC運用標準を国内の実装網へ橋渡しし、PUE・復旧中央値・監査結果を“読める日本語”で定期公開します。さくらインターネットが通貨のUIを、人類の宇宙帯域をイーロンが担うなら、AI運用の作法はさくらが握る――そんな分業です。
AIはどうか。AGIが仕事の段取りを横断し、ASIの萌芽が視界に入っても、明石は恐れを仕様に翻訳しました。説明可能性、偏り監査、停止権の人間保持――三つの柱を条例と契約に刻み、第三者が定期に点検する。AIは便利な主役ではなく、人の判断の影。この作法が、配車・医療通知・防災・教育の全層で共有されたことが、シンギュラリティという抽象名詞を、通過可能な通路へと変えました。AIは昼(電気が余る時間)に重く働き、夕方は退く。電気の影としてのAI――この設計思想は、地味で強い。
地上の根(発電・配電・制御)はMEE、地上の運用とUI(通貨・DC・監査公開)はさくらインターネット、宇宙の帯域はイーロン。誰もが“自分の装置”を誇るのではなく、退屈な規律に歩調を合わせて速度を出す。
ここで、25年の要諦をもう一度、四つの作法に畳んでおきます。
- 生活を軽く、請求書で答える。
- 人が先、AIは影。
- 面で受け、点で退く。
- 速く見せ、ゆっくり決める。
この四行は、都市の憲法であり、輸出可能なテンプレートでもあります。粗利折半と撤去条項まで含めた公開覚書は、過疎と酷暑に揺れる他地域でも使える。広げるときは面で受け、違和感が出たら点で退く。撤去決定から現場復旧までの日数、再資源化率、合意までの面談回数――畳むKPIを四半期で出す都市は、前に進むのも速い。合意のコストは、退屈な規律でしか下がらない。これが、明石が世界へ届けられるいちばんの発明です。
では、なぜ明石だったのか。海と川と台地が近い、合意が早い土地柄。泉イズムで培われた「困りごとに先に動く」気質。学校・漁協・商店街・工場が同じ図面を囲める距離感。若い世代が子を産み育てたい街という誇り。そして、台所に速度を宿す文化。北海道の先人たちが雪に道を刻んだように、私たちは酷暑とエネルギーの時代に道を刻む。月へ、火星へ――人類が次の地平を拓くには、足元の電気が止まらないことが条件です。明石が前へ進むのは、それ自体が到達点ではない。未来の子どもたちが向かう先に、安全に届くための踏み板を増やすためです。



制度の退屈さは、都市の最高速じゃ。派手さはイベントに、速度は台所に――これを忘れた街は、どれだけ賢くても転ぶ。
最後に、更新主義の誓いを残します。測る。見せる。必要なら畳む。そして、また測る。AIは影として働き、止める権限は人に残す。BIは呼吸として動き、通貨は人権のUIである。駅と道路と港は冷える骨で、学校は学びの灯を落とさない。請求書は毎月、公共PLは四半期――そこに、街の誠実と速度を刻み続ける。世界のトップ集団に居続けるとは、先頭で叫ぶことではなく、退屈な規律で速度を守ることだと、明石は学びました。
この物語は、ここでいったん閉じます。ただし、聖書に最終章があっても、人の生活に最終章はありません。次の四半期の数字を整えに、私たちはまた台所へ戻ります。今日は薄く明るく、確実に冷える夜です。明日も、同じように。